2011年9月17日土曜日

社員が英語ができなかったらそれは会社の問題


英語研修は「自己啓発」扱いで(一定の会社補助があっても)自己負担,という会社は多いと思う.英会話学校と法人契約で社内開講という場合には,マンツーマンというわけにはいかないためレベル別クラスのグループ研修となり,低いクラスは(主に費用対効果の面から)開講されない,というのもよくある話だろう(想像で書いてます).そこのところは自己学習で,ある程度のレベルまで引っ張り上げてください,という態だ.
だいたいその開講されないラインはTOEIC 500ぐらいではないかと思う.

しかし英語ができない人が,「自己学習」と放置されて学ぶモチベーションを維持し,そこのラインまで持ってくることができるだろうか.語学はできるようになってこそ,はじめて読めて/聞けて面白いな,と感じるのであって,それ以下のちんぷんかんぷん状態では,できないことのネガティブな感覚が先行してモチベーションなど湧かないと思う.

一方で法人において,とくに総合職が英語ができないというのは,個人の資質云々以上に,組織としての大きな損失だ.社員のほとんどが日本で働いて日本にモノを売っている会社でも,取引先は外国で英語のメールを読み書きしなければいけなかったり,部品メーカーのドキュメントは(日本メーカーの部品でも)英語だったり,外国の規格を満たすために英語の文章を作成しなければいけなかったりと,本業の強みを活かす際に英語が足枷になっているようでは困る.地方の小さなオンリーワンメーカー(で上場企業)で,納入先は中国,東南アジア,ヨーロッパという会社は,この田舎でもいくつか挙げられる.
実際に社内で英語がネックになっている人も複数知っている.そしてそういう人でモチベーションをキチッと保って英語を勉強し,効果を上げているという人は見たことがない.僕の見聞範囲が狭いだけであることを祈る.

であれば,そのレベルの人たちには会社が全額負担で外部ででも英語研修を受講させるとか,その時間は残業時間扱いにするとか,などのインセンティブをつけて,底上げを図る必要があるのではなかろうか.でないと,いつまでも「忙しい」(―そう,そういう人たちはたいてい「忙しい」―)を理由に英語ができない人が昇格せずに滞留し続けるだろう.それは本人にとっても会社にとっても損失だ.

あるいは会社がそこに投資ができなければ,採用条件にTOEICを義務づけて,例えば600以下ははっきりと足切りとすればいい.HSBCの850,SAMSUNGの900とは言わないから.幸い不況で買い手市場なので,それでも優秀な人材は集まるはずだ.明示することで読むべき応募書類も減るだろう.

社員が英語ができなかったら,それは人事政策の問題なんである.

1 件のコメント:

  1. これは私企業の話だけど、社会と公教育の関係もそうですよね。受益者負担ということになって、義務教育以外は授業料を取る、ということにこの国では永らくなっているけど(戦前の一部官立学校を除く)、世界的にみるとそうではないところはいくらもあるわけで、それは教育の受益者は個々の学生のキャリアではなく、それをおってなる将来の社会全体だ、というところからきている。

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